蝶の調査員に聞く、五島市の夏
~小さな羽が教えてくれる、五島の自然~

~お話を伺った方~
米 文博(よね ひろふみ)さん 【長崎県生物学会会員】
富江町出身。78歳。長年、蝶の調査や渡り鳥の観察・撮影を続け、長崎県生物学会誌などにも論文を発表。67歳で五島へ戻り、現在も富江町を中心に福江島の自然観察を続けている。
海を越えてやってくる「迷蝶」に魅せられて
五島市富江町出身の米文博さんは、長崎県生物学会に所属し、長年にわたり蝶の調査・撮影を続けてきました。子どもの頃から昆虫が好きだった米さんが、特に興味を持ったのが「迷蝶(めいちょう)」と呼ばれる蝶たちです。迷蝶とは、本来の生息地から風などに乗って迷いこんできた蝶のこと。なぜこの小さな体で海を越え、五島へたどり着くのか。その不思議さに惹かれ、調査を続けてきたといいます。
夏の五島で出会える蝶たち
五島で夏に観察しやすい蝶のひとつが、富江の只狩山周辺で見られるリュウキュウムラサキです。早い年では6月下旬頃から姿を見せ、7月下旬から10月初め頃まで観察できるそうです。只狩山は景色もよく、親子での散策にもおすすめの場所。朝10時頃が蝶を見つけやすい時間帯で、静かに歩きながら観察するのがポイントです。五島では、モンシロチョウ、キタキチョウ、ヤマトシジミ、ベニシジミのほか、ナミアゲハ、キアゲハ、カラスアゲハ、ジャコウアゲハ、アオスジアゲハなど、身近な蝶も多く見られます。さらに、玉之浦の大宝周辺では9月頃に絶滅危惧種のタイワンツバメシジミが見られることもあるそうです。

いつもの散歩道が、少し違って見えてくる
「五島の夏を楽しむなら、少し小高い山や自然の中を歩いてみてほしい」と米さん。散歩やトレッキングの途中で蝶を見つけ、「これは何という蝶だろう」と調べてみるだけで、いつもの風景が少し違って見えてきます。海や山の景色だけでなく、足元の草花や、花のまわりを舞う蝶に目を向けることも、五島の夏の楽しみ方のひとつです。

蝶の数から感じる、自然環境の変化
一方で、米さんは五島の自然環境の変化も感じています。「五島に帰ってきた頃より、蝶の数が減っているように思います」と米さん。温暖化や気候変動によって、例えば、渡り鳥が餌を必要とする時期と、餌となる生き物が増える時期がずれてしまう「フェノロジカル・ミスマッチ」のような問題も起きているといいます。「自然に目を向けて、この環境がどう変わっているのかを自分の目で確かめてほしい。そして、生き物たちを大事にする世の中になってほしいですね」小さな蝶の羽ばたきは、五島の自然の豊かさと、その変化を静かに教えてくれます。

CHECK
米さんおすすめの観察スポット
只狩山/富江リュウキュウムラサキなどの迷蝶が見られる場所。景色もよく、親子での散策にもおすすめです。
鬼岳周辺ウラギンスジヒョウモンなど、草原環境を好む蝶に出会えることもあります。
大宝/玉之浦9月頃には、絶滅危惧種のタイワンツバメシジミが見られる貴重な場所です。
POINT
夏の五島市で蝶を楽しむポイント
蝶は音や人の動きに敏感です。近づきすぎたり、大きな音を立てたりせず、静かに観察しましょう。観察におすすめの時間は、朝10時頃。子どもの自由研究には、モンシロチョウの観察もおすすめです。キャベツなどに産みつけられた卵から育て、羽化までの日数を記録すると、命の変化を身近に感じることができます。
【取材・執筆・掲載】fully編集部
【掲載先】fullyGOTO2026夏号


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